小児科
小児科
子どもの病気は大人とは様々な点で異なります。子どもは体調が悪くても症状を訴えなかったり、訴えがわかりにくかったりという特徴があります。どこが痛いのか痛くないのか乳幼児はわからないことも多くあります。また、発症や進行が急であることが多く、ついさっきまで元気にしていたのに、気づくとぐったりしているということは珍しくありません。病気の種類も多く、中でも感染症が多いのが特徴です。子ども特有の感染症もあり、感染症にかかりながら免疫を得ていくため、一生で最も感染症にかかることが多い時期といえます。
日ごろから子どもの状態や平熱、顔色などをよく観察しておくことが大切です。「いつもと違う」という保護者の直感が、重大な病気の発見につながることもよくあります。お子様の症状やお困りのことは何でもご相談ください。育児相談や予防接種など幅広く対応していますので、お気軽にご来院ください。
以下のような症状・病気が疑われる方はご相談ください。
はっきりとした症状はないけれど、「いつもと違う」という直感が、重大な病気の発見につながることもよくあります。お子様の症状やお困りのことは何でもお気軽にご相談ください。
子どもの受診でもっとも多いのが発熱で、原因のほとんどが感染症です。大人と同様に37.5℃以上を「発熱」、38℃以上を「高熱」と定義しています。
子どもの平熱は一般的に大人よりやや高めで、36.0〜37.4℃くらいと言われています。体温を調整する自律神経がまだ十分に発達していないため、気温や食事などの影響を受けやすく、一日の中でも朝方は低く、夕方に高くなる傾向があります。朝方と夕方で1度以上体温が異なることも珍しくはありません。普段から同じ条件で、同じ時間帯に体温を測定し、お子様の平熱を知っておくことは大切です。お子様が熱を出すと心配になりますが、幼い子どもは様々なウイルスに初めて感染することが多く、その都度、防御反応としてよく熱を出します。また、体力もなく、疲れたり、興奮したりしただけでも熱が出ることがあります。
お子様が熱を出したときに受診させるかどうか悩まれる方は多いかと思いますが、以下のような場合には受診するようにしてください。
発熱は病気のサインとして重要なうえ、体の防御反応であるため、むやみに薬で熱を下げる必要はありません。熱があっても元気で機嫌がいい、ある程度食事が摂れている場合は解熱剤を使用せずに様子をみてもいいでしょう。一方、高熱でしんどそう、つらそうであれば、解熱剤で少し熱を下げてあげれば楽になることが多いです。解熱剤を使うかどうか悩まれる場合はぜひご相談ください。
子どもは頻繁に風邪をひきます。幼児では年に6~8回、乳児になると1年間で約15回風邪をひくと言われています。風邪は正式には「かぜ症候群」といい、上気道(鼻、副鼻腔、のど)の急性の炎症による鼻水、鼻づまり、くしゃみ、のどの痛み、咳、痰などの症状を呈する疾患です。発熱や頭痛、全身倦怠感、食欲低下などを伴う場合もあります。かぜ症候群の原因微生物の80~90%はウイルスが占めており、粘膜から感染して炎症を起こします。ウイルス性の風邪の治療は安静と水分・栄養補給が大切で、抗菌薬はウイルスには効果がないため処方は不要です。細菌性の風邪が疑われる場合には抗菌薬の投与を行います。鼻水、のどの痛み、咳、発熱などの症状がひどい場合には薬物による対症療法を行います。ほとんどの風邪は安静と水分・栄養補給などで自然に治りますが、まれに気管支炎や肺炎、中耳炎、脳炎などに進行する場合もありますので、お子様の症状の経過をしっかりと観察してください。
インフルエンザウイルスによる急性熱性感染症で、毎年冬から春先にかけて流行します。主に接触感染、飛沫感染によってうつります。約1~3日間の潜伏期間の後に、38℃以上の突然の発熱や頭痛、全身倦怠感などが出現します。筋肉痛、関節痛などを伴うことが多く、続いて咳、鼻汁、のどの痛みなどの症状が出現します。人によっては吐き気や嘔吐など胃腸症状を認めることもあります。典型的な経過としては、およそ1週間で回復しますが、中耳炎や脳症、肺炎などを合併することがあります。乳児や気管支喘息を基礎疾患にもつ子どもでは、肺炎が重症化しやすいため注意が必要です。通常の風邪とは異なり急激に発症し、全身症状が強いことが特徴です。発症後5日間を経過し、かつ解熱後2日(幼児は3日)を経過するまでは出席停止となります。
インフルエンザの診断は鼻から鼻粘膜のぬぐい液を採取することにより、抗原迅速診断キットを用いて約10分から15分で可能です。ただし、発熱直後では体内のインフルエンザウイルスがまだ少なく、正しい検査結果が得られない可能性があります。発熱などの症状が出てから12時間以降24時間くらいを目安に検査を受けられることお勧めします。
インフルエンザの主な治療は抗ウイルス薬の投与で、内服薬、吸入薬、注射薬がありますが、いずれもウイルスが体内で増殖してしまうまでの発症後48時間以内に投与しなければ効果が乏しいとされています。抗ウイルス薬以外の治療としては発熱や咳、鼻水、のどの痛みなどに対する対症療法になります。インフルエンザを疑う症状が出た場合には、発熱から12時間以降を目安になるべく早く受診することが大切です。ただし、症状がひどい場合は12時間を待たずにすぐに受診してください。
インフルエンザはいったん流行が始まると、短期間に多くの人へ感染が拡がります。重症化しないため、合併症を起こさないため、周りの人たちにうつさないためにも、ワクチン接種が大切です。
突発性発疹は、2歳までにほとんどの子どもがかかるとされている頻度の高い感染症で、生後4か月から1歳前後までにかかることが多いです。鼻水や咳などの症状なしに、突然の高熱(38~40℃)で発症し、高熱のわりに機嫌がいいことが特徴です。通常、発熱は3〜4日で自然に治まりますが、解熱とほぼ同時に全身(顔や身体、腕や脚など)に発疹が多数みられます。発疹は2~10㎜程度の小さな赤いプツプツで、2~4日ほどで跡を残さず消失します。かゆみや痛みなどは伴いません。一般的に後遺症を残すことなく1週間程度で自然に治る病気ですが、熱が上昇する際に熱性けいれんを発症することもあります。
生後6か月くらいから4~5歳ころの乳幼児に多く、夏に流行するウイルス感染症です。手のひら、足の裏、口の中に水疱(水ぶくれ)ができるのが特徴です。発熱を伴うこともありますが、一般的には軽度のことが多いです。水疱は口の手前側にみられます。
感染した子どもの咳やくしゃみ、ウイルスの付着した唾液や便を介して感染するため、保育施設や幼稚園で集団感染することもよくあります。口の中の水疱が破れると、刺激のある食べ物がしみて痛がるようになります。口の中の症状に少し遅れて、手のひら、足の裏などに生米くらいの水疱ができます。この発疹は一週間くらいで自然に治りますが、まれに髄膜炎を合併することがありますので、高熱が出る、頭が痛いと訴えている、ひきつけや嘔吐などの症状がある場合はすぐに受診してください。
夏かぜのウイルスで起こる病気で、1歳ころの幼児に多くみられます。水疱ができる点は手足口病と似ていますが、手や足には水疱はできず、口の中(のどの奥)だけに水疱ができて、38〜40℃の高熱が2~3日続くのが特徴です。のどの奥に小さな水疱ができるため、痛みで食事が摂れないことも多いです。ひどい場合は、水分も飲めず脱水症になることもあります。熱は2~3日で下がり、水疱も一週間くらいで治ります。治療はのどの痛みを抑える薬などで対症療法を行います。まれに髄膜炎を合併することがありますので、高熱が出る、頭が痛いと訴えている、ひきつけや嘔吐などの症状がある場合はすぐに受診してください。
2歳までにほとんどの子どもが一度はかかるとされている頻度の高い感染症で、生後6か月未満の乳児や心臓や肺に基礎疾患をもつ乳幼児が感染すると重症化することもあります。元々は冬に流行することが多かったのですが、近年は夏から冬に流行がみられています。
鼻水、咳といった上気道炎の症状から始まりますが、その後約25~40%の乳幼児ではゼーゼー、ヒューヒューとなったり(喘鳴)、呼吸が多くなったりし、場合によっては呼吸困難を伴うような細気管支炎、肺炎に進行し、入院による治療が必要となります。急に症状が悪化することもありますので、お子様の体調をよく観察しておくことが大切です。
たにがわクリニックでは、迅速診断キットによるRSウイルスの診断が可能です。
また、RSウイルス感染予防のシナジス(パリビズマブ)の対象者(保険適用)には投与も可能です。投与を希望される場合は一度ご相談ください。
麻疹ウイルスによって引き起こされる全身感染症であり、一度感染すると免疫は一生持続するとされています。空気感染の他に、飛沫感染や接触感染でうつります。通常は10〜12日間の潜伏期間を経て、38~39℃の発熱と同時に咳、鼻水、目の充血などの症状が出ます。頬の内側に白いプツプツとした斑点(コプリック斑)が見られるのも特徴の一つです。3~4日で一度解熱しますが、その後40℃を超す高熱と赤くかゆみのある発疹が現れ、発疹は首や顔から始まり、2,3日で全身に広がります。1週間くらいかけて徐々に解熱し、発疹も消えていきますが、しばらく色素沈着が残ることがあります。解熱後3日経過するまでは出席停止です。
麻疹ウイルスは感染力がひじょうに強いため、免疫を持っていない人が感染するとほぼ100%発症し、免疫を持っていない周りの人にうつします。さらに麻疹は脳炎や肺炎、中耳炎などの合併症を起こして重症化することもありますので、予防接種によりかからないようにすることが大切です。1歳になったら麻疹・風疹混合(MR)ワクチンの接種を受けるようにしてください。(→詳しくは予防接種へ)
もし、麻疹かもしれないという症状が出た場合には、事前に電話で連絡をお願いします。
風疹ウイルスによって引き起こされる全身感染症であり、一度感染すると免疫は一生持続するとされています。飛沫感染によってうつり、潜伏期間が14~21日と長く、首や耳の後ろのリンパ節が腫れ、頭痛や咳、鼻水などの症状が出現します。この時期の発熱はあっても軽度のことが多いです。その後37~38℃の発熱と同時に顔や体幹部を中心に発疹が出現しますが、2,3日で解熱し発疹も消えていくのが特徴です(風疹は「三日ばしか」とも言われます)。すべての発疹が完全に消えるまで出席停止です。
1歳になったら麻疹とともに、麻疹・風疹混合(MR)ワクチンの接種を受けるようにしてください。
(→詳しくは予防接種へ)
ムンプスウイルスによる感染症で、感染力が強く、3~6歳の幼児によくみられます。主な症状は発熱と耳下腺の腫れです。耳下腺(耳の前下方)の他に、顎下腺(あご骨の下方)や舌下腺(舌の下方)なども腫れて痛みが出ることがあります。まず片方が腫れ、2~3日経ってもう片方も腫れてくる場合もありますが、片方のみの場合もあります。耳下腺の腫れと同時に発熱がみられることもあり、3日目くらいが腫れも発熱もピークとなります。その後、7~10日程度で腫れが治まります。耳下腺・顎下腺・舌下腺の腫れが出現してから5日間経過し、かつ全身状態が良くなるまでは出席停止です。まれに髄膜炎を合併することがありますので、高熱が続く、頭が痛いと訴えている、吐き気や嘔吐などの症状がある場合はすぐに受診してください。また思春期以降におたふくかぜにかかると、卵巣炎や精巣炎などを合併することもあります。
おたふくかぜの予防接種は任意接種になりますが、1歳の間に1回目のワクチン接種を済ませておくとよいでしょう。(→詳しくは予防接種へ)
水痘・帯状疱疹ウイルスによる感染症で、空気感染の他に、飛沫感染、接触感染でうつります。14日間の潜伏期間を経て、37~38度程度の発熱とともに、虫刺されのようなかゆみのある赤い小さな発疹が頭皮や顔、体幹などに現れます。その後発疹は水疱(水ぶくれ)になり、手や足にも広がりかゆみが強くなります。水疱は2~3日でしぼみ、黒褐色のかさぶたになり、7~10日程度で治ります。すべての水疱がかさぶたになれば登校可能です。
みずぼうそうは治ってもウイルスは体の神経節という部位に長年に渡り潜んでおり、何年か後に帯状疱疹(帯状ヘルペス)という病気を発症することがあります。
みずぼうそうはワクチン接種による予防が大切です。ワクチンを接種していてもみずぼうそうを発症することはありますが、皮疹は少なく、軽症で済むことが多いです。(→詳しくは予防接種へ)
もし、みずぼうそうかもしれないという症状が出た場合には、事前に電話で連絡をお願いします。
ヒトパルボウイルスB19によるウイルス感染症で、両頬に蝶の形をした紅斑と腕や脚にレース状(網目状)の紅斑が出ることが特徴です。5~10歳に多くみられ、約10日(4~28日)の潜伏期間を経て軽い風邪症状の後に、両頬の紅斑が出現します。リンゴのように赤い頬になることから「リンゴ病」と呼ばれます。その1~2日後に、腕や脚にレース状または網目状の紅斑が出現します。紅斑はかゆみを伴うこともありますが、1週間程度で自然に消えるため、特に治療は必要ありません。また本人が元気であれば、特に学校を欠席する必要もありません。
アデノウイルスによる感染症で夏にみられることが多いですが、一年を通してみられます。接触感染、飛沫感染でうつり、感染力が強いため、学校などで集団感染を起こしやすい病気です。39~40℃の高熱で発症し、4~5日程度続き、結膜炎による目の充血、目やにや咽頭炎によるのどの痛み、頭痛などを伴います。プールを介して集団感染することが多いため、「プール熱」とも呼ばれます。
迅速抗原診断キットによる診断が可能ですが、治療は対症療法のみになります。発熱やのどの痛み、結膜炎の症状がなくなってから2日間は出席停止です。
感染性胃腸炎はウイルスや細菌などの感染により、嘔吐や下痢などの胃腸症状をきたす病気の総称です。子どもの感染性胃腸炎のほとんどはノロウイルスやロタウイルス、アデノウイルスなどのウイルス性で、一部に細菌性(カンピロバクターやサルモネラ菌、腸管出血性大腸菌など)がみられます。ウイルス(あるいは細菌)が付着した料理を食べたり、手指についたウイルス(細菌)が口に触れたりすることで感染し、冬から春にかけて幼稚園や小学校などで集団発生することも少なくありません。
症状は下痢、腹痛、嘔吐、発熱が多く、治療は脱水を予防し、症状に合わせた内服治療を行います。細菌性であっても抗菌薬なしで自然に治ることが多いですが、重症度などによっては抗菌薬の投与が必要となります。子どもは脱水になりやすいため、脱水予防が大切です。自宅でできる経口補水療法(ORT oral rehydration therapy)が効果的ですが、水分摂取ができない場合には点滴による脱水の治療も行います。
ウイルス性胃腸炎の原因となるノロウイルスやロタウイルスは感染力がとても強く、家族に感染しやすいため、家族全員が十分に手洗いをするように心がけましょう。
ロタウイルスはワクチンによる感染予防、重症化予防が可能です。生後2か月の誕生日にロタウイルスワクチンでワクチンデビューするのがお勧めです。(→詳しくは予防接種へ)
溶血性連鎖球菌(溶連菌)という細菌による感染症で、高熱とともに咽頭炎・扁桃炎によりのどが真っ赤になり、痛みを訴えます。舌にイチゴのようなブツブツができることもあります。風邪と症状は似ていますが、咳や鼻水はないことが多いです。その後、首や胸の辺りに赤い発疹が出現し全身に広がりますが、手のひらや足の裏、口の周りには発疹ができないのが特徴です。
迅速抗原診断キットによる診断が可能で、溶連菌感染症と診断されれば、抗菌薬による治療を行います。抗菌薬が効けば、1~2日で解熱し、のどの痛みも消えることが多いですが、症状は治まっても抗菌薬を10~14日間内服する必要があります。溶連菌感染による咽頭炎や扁桃炎は抗菌薬を飲むとすぐによくなる病気ですが、数週間経ってからリウマチ熱や溶連菌感染後急性糸球体腎炎、IgA腎症といった病気を発症することがまれにあるため、抗菌薬をきちんと内服することが大切です。溶連菌感染症のような症状があれば、なるべく早く受診し、治療を受けるようにしてください。
マイコプラズマという微生物による肺炎で、子どもの肺炎の主な原因の一つですが、大人でもよくみられます。発熱、長引くしつこい咳が特徴ですが、比較的元気なことも少なくありません。胸のレントゲンで白っぽい肺炎の影が認められます。治療は抗菌薬を中心とした薬物治療を行います。
初夏から夏にかけて乳幼児によくみられる皮膚の病気で、正式には伝染性膿痂疹と呼びます。水疱(水ぶくれ)ができるタイプとかさぶたができるタイプがありますが、乳幼児に多いのは水疱ができるタイプです。黄色ブドウ球菌は健康な人の鼻腔や皮膚に存在する細菌で、虫刺されや湿疹、あせも、すり傷などに黄色ブドウ球菌が感染することにより、水疱ができます。かゆみを伴い、水疱が破れてただれ、かきむしった手や衣服から別の部位に「飛び火」するように広がります。手でよく触れる耳や鼻によく見られます。
治療は皮膚をよく洗い、清潔に保つことが大切です。重症度に合わせて抗菌薬の塗り薬や飲み薬による治療も行います。
他の人にうつさないように、プールは治るまで禁止です。また、タオルからでもうつるので、家族とは別のタオルを使うようにしましょう。
百日咳菌による細菌感染症で、5~10日間の潜伏期間を経て、鼻水、くしゃみ、軽い咳といった風邪症状で発症します。咳が長引き、段々ひどくなっていき、百日咳に特有な咳の発作が出るようになります。コンコンコンコンと激しく咳こんだ後に、ヒューという音を立てて息を吸い込む発作を繰り返します。発作の後には嘔吐することもあります。百日咳という名前の通り、咳が長く(百日くらい)続くため、体力や免疫力が低下してしまいます。乳児期(特に生後6か月未満)にかかると重症化しやすく、また肺炎や脳症を合併し、命にかかわることもあります。
治療は抗菌薬の内服治療ですが、2週間以上内服する必要があります。
百日咳にかからないようにするためには、予防接種が大切です。通常四種混合ワクチンとして生後3か月から12か月の間に打ち始めるのが望ましいとされています。百日咳にかからないため、重症化しないためにもきちんとワクチン接種を受けましょう。(→詳しくは予防接種へ)