糖尿病の治療(薬物療法)|たにがわクリニック|栗東市の内科

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糖尿病の治療(薬物療法)

糖尿病の治療(薬物療法)|たにがわクリニック|栗東市の内科

薬物療法

近年、糖尿病治療薬は大きく進歩しており、低血糖を起こしにくく、体重を減らす作用を持つものもあります。また週1回だけ内服したり、注射を打ったりするような薬も増えてきています。
どの薬をいつから開始するかは、患者様の糖尿病のタイプや合併症の進行程度などとともに、生活スタイルなども総合的に判断して決定します。内服療法を続けていても、なかなか良好な血糖コントロールにならない方には、新規にインスリンやGLP-1受容体作動薬などの自己注射薬の導入・指導も行います。

経口血糖降下薬・注射薬は、薬の作用の仕方から以下のように分類されます。

・インスリン分泌促進系(インスリンの分泌を促進させることにより、血糖降下作用を発揮します)
・インスリン分泌非促進系(インスリンの分泌は促進させずに、インスリンの効きをよくしたり、糖の吸収を遅らせたりすることにより血糖値の上昇を抑制します)
・インスリン

それぞれの薬の特徴について、簡単に説明します。

インスリン分泌促進系

  1. スルホニル尿素(SU)薬
    膵臓のβ細胞の細胞膜上にあるSU受容体に結合することによって、インスリンの分泌を促進し。血糖を低下させます。食事療法、運動療法だけでは十分に血糖コントロールが得られない場合に、SU薬の投与を検討します。
    経口血糖降下薬の中では、もっとも血糖降下作用が強く、そのため低血糖も起こしやすい薬剤です。高齢者などでは、薬剤量が少量でも低血糖を起こすことがありますので、あらかじめ低血糖に対する対処法などを知っておいていただくことが大切です。また、食事療法や運動療法が十分にできていない場合、体重増加につながりやすいので、注意が必要です。
  2. 速効型インスリン分泌促進薬(グリニド薬)
    スルホニル尿素(SU)薬と同様に、膵臓のβ細胞の細胞膜上にあるSU受容体に結合しインスリンの分泌を促進し、血糖を低下させますが、SU薬に比べて薬の効きが速く、また効果が切れるのも速いのが特徴です。このため、食後の血糖値を下げるのに適した薬剤で、必ず食事の直前に飲む必要があります。食事の直前とは、一般的には「食事を摂る前10分以内」のことを言い、仮に食事の30分前に飲んでしまうと、食事を開始するまでに低血糖を起こす可能性がありますので、飲むタイミングを間違えないように注意が必要です。
  3. DPP-4阻害薬
    食事をすることによって小腸から分泌される消化管ホルモンの中で、膵臓のβ細胞を刺激してインスリンの分泌を促進する働きをもつものを総称して、「インクレチン」と呼びます。このインクレチンにはGLP-1(ジー・エル・ピー・ワン;グルカゴン様ペプチド-1)とGIP(ジー・アイ・ピー;グルカゴン依存性インスリン分泌刺激ペプチド)があります。食事を摂取することにより血糖値が上昇すると、GLP-1は小腸下部のL細胞、GIPは小腸上部のK細胞から分泌され、膵臓β細胞の表面にあるそれぞれの受容体に結合することにより、β細胞からインスリンを分泌させます。このGLP-1やGIPは、血糖値が高い場合にのみインスリンを分泌させるという特徴があります。
    このようにインスリンの分泌に関与しているインクレチンは、DPP-4(ディー・ピー・ピー・フォー)という酵素によって分解されますが、DPP-4阻害薬は、このDPP-4を阻害することによって、インクレチンが分解されにくくなり、GLP-1やGIPの濃度を高めることによって、血糖を低下させます。
    インクレチンは血糖値が高いときにのみインスリン分泌を促すことから、DPP-4阻害薬を単独で飲んでいる場合には低血糖を起こしにくいのが特徴です。
    1日に1~2回、毎日内服するタイプの薬の他に、週に1回内服するタイプの薬もあります。
  4. GLP-1受容体作動薬
    GLP-1(ジー・エル・ピー・ワン;グルカゴン様ペプチド-1)は、GIP(ジー・アイ・ピー;グルカゴン依存性インスリン分泌刺激ペプチド)とともに、「インクレチン」と呼ばれる消化管ホルモンで、食事をすることにより血糖値が上昇すると、小腸から分泌され膵臓のβ細胞を刺激してインスリンの分泌を促します。DPP-4阻害薬と同じく、血糖値が高いときにのみインスリンの分泌を促すため、GLP-1受容体作動薬単独では低血糖を起こしにくい薬剤です。空腹時血糖値と食後血糖値の両方を下げることができ、食欲を抑えることにより、減量効果も期待できるのが特徴です。
    薬を使い始めの頃には、吐き気や下痢、便秘など胃腸障害の副作用を認めることが多いですが、投与を続けていると徐々に軽減することが多いです。
    元々GLP-1受容体作動薬は自己注射薬しかなく、1日に1~2回もしくは週に1回自己注射をする必要がありましたが、2021年に初の経口薬が販売され、自己注射には抵抗があったり、注射手技の習得が難しかったりという理由でGLP-1受容体作動薬を使うことのできなかった患者様にも、使うことができるようになりました。
    さらに、2023年にはGLP-1受容体とともに、GIP受容体にも結合して活性化させるGIP/GLP-1受容体作動薬が販売されました。現時点ではチルゼパチドという週1回の自己注射薬1種類のみとなっています。

インスリン分泌非促進系

  1. ビグアナイド薬
    肝臓での糖の産生(糖新生)を抑えることにより血糖値の上昇を抑える以外に、小腸からの糖の吸収を抑制したり、インスリン抵抗性を改善させることにより筋肉や脂肪組織での糖の取り込みを促進したりすることにより、血糖降下作用を発揮する薬剤です。体重を増加させにくく、またビグアナイド薬単独では低血糖を起こしにくい特徴もあることから、2型糖尿病の治療に広く使用されている薬剤です。
     ただし、ビグアナイド薬は肝臓で作用して、腎臓から排泄される薬剤のため、肝機能や腎機能が低下している患者様には薬剤の量を調整する必要があります。
  2. チアゾリジン薬
    2型糖尿病では、肝臓や筋肉でインスリンに対する反応が鈍くなり、インスリンは不足していないにもかかわらず、インスリンの血糖降下作用が十分に得られないという状態がみられ、これをインスリン抵抗性といいます。このインスリン抵抗性は肥満(とくに内臓脂肪型)や高血圧、高中性脂肪血症や低HDLコレステロール血症などが関与していると考えられています。
    チアゾリジン薬は、インスリン抵抗性を改善させることにより、筋肉や脂肪組織における糖の取り込みや糖の利用を促進させ、肝臓における糖の産生を抑制することにより血糖降下作用を発揮する薬剤です。チアゾリジン薬単独では低血糖を起こしにくい薬剤ですが、体重が増加しやすいため、食事療法を確実に実行することが大切です。
  3. α-グルコシダーゼ阻害薬
    食事に含まれる炭水化物(糖質)は、小腸でα-グルコシダーゼという酵素によってブドウ糖に分解され、分解されたブドウ糖が各組織でエネルギーとして利用されたり貯えられたりします。α-グルコシダーゼ阻害薬は、α-グルコシダーゼの働きを阻害することにより、糖質の分解を遅らせ、吸収を遅らせることにより、食後の血糖値の上昇を緩やかにし、食後の高血糖を抑制する薬剤です。
    食事療法、運動療法ができているのに、食後に高血糖がみられるような2型糖尿病の治療に有効な薬剤です。必ず食事の直前に服用する必要があります。
     服薬初期には腹部膨満感や下痢など消化器症状の副作用を認めることがありますが、服薬をきちんと続けていると徐々にこれらの症状は改善・消失することが多いです。
  4. SGLT2阻害薬
    血液中のブドウ糖は、腎臓の糸球体でろ過されたのち、近位尿細管で再吸収されます。この近位尿細管におけるブドウ糖の再吸収を担っているのがSGLT2(エス・ジー・エル・ティー・ツー)と呼ばれる物質です。SGLT2阻害薬は、SGLT2の働きを阻害することにより、近位尿細管でのブドウ糖の再吸収を抑制し、ブドウ糖の尿への排泄を促し、結果的に血糖降下作用を発揮する薬剤です。糖尿病の治療の根幹は食事療法であることに変わりはありませんが、SGLT2阻害薬により1日あたり約200~500kcalに相当する糖が尿中に排泄されることになり、食事量を減らさなくても体重減少が期待される薬剤です。またSGLT2阻害薬単独では低血糖を起こしにくいのも特徴です。一部のSGLT2阻害薬は、1型糖尿病の患者様にもインスリン治療の補助療法として適応が認められています。さらに、SGLT2阻害薬には、糖尿病性腎症の進行を抑える効果があることも報告されています。その他、血圧降下作用や心血管イベントのリスクを抑制する効果も報告されている薬剤です。

インスリン

1型糖尿病の方や、内服療法やGLP-1受容体作動薬の自己注射を続けていても、なかなか良好な血糖コントロールの得られない2型糖尿病の方には、新規にインスリンの自己注射薬の導入・指導を行います。必要に応じて自宅での自己血糖測定の指導も行います。
また、インスリンによる自己注射療法を行っている方には「FreeStyleリブレ」や「DEXCOM G6」の処方も可能です。