糖尿病とは
糖尿病とは
2016(平成28)年の「国民健康・栄養調査」の結果、糖尿病が強く疑われる人(糖尿病有病者)と、糖尿病の可能性が否定できない人(糖尿病予備群)はいずれも約1,000万人と推計されました。つまり予備群も含めると成人の5人に1人が糖尿病といえ、まさに「国民病」となっています。
糖尿病はインスリンの作用不足、つまり「インスリンが十分に働かないこと」により血糖値が慢性的に高い状態が持続する病気です。インスリンとは膵臓で合成・分泌されるホルモンで、血糖を下げることのできる唯一のホルモンです。
糖尿病は大きくは以下の4つに分類されます。中でも代表的なものが1型糖尿病と2型糖尿病で、2型糖尿病は日本人で圧倒的に多く、生活習慣病の一つとされています。
1、1型糖尿病
2、2型糖尿病
3、その他の特定の機序、疾患によるもの
a、遺伝子異常が同定されたもの
b、他の疾患、条件に伴うもの
4、妊娠糖尿病
膵臓にはβ細胞と呼ばれる細胞があり、インスリンの合成と分泌を行っています。このβ細胞が自己免疫性機序などにより破壊されインスリン欠乏が生じ糖尿病となるのが1型糖尿病です。遺伝的背景に加えてウイルス感染などが引き金となって発症すると考えられています。2型糖尿病ほどではありませんが、1型糖尿病でも家系内で同じ病気を発症することがあります。
1型糖尿病は小児から思春期に多くみられますが、中高年で初めて診断されることも少なくありません。
2型糖尿病は、遺伝的背景に加えてインスリンの分泌低下や、過食、運動不足、肥満、ストレスといった生活習慣が関係することにより発症すると考えられています。1型糖尿病に比べて家系内血縁者に同じ病気を発症する頻度が高いのも2型糖尿病の特徴の1つです。
日本人の糖尿病患者の90%以上が2型糖尿病であり、近年、生活習慣の変化に伴い増加傾向にあります。40歳以上の中高年に多く見られますが、小児での発症も増加しつつあることが問題視されています。
糖尿病はインスリンが十分に働かないことにより血糖値が持続的に高くなる病気ですが、インスリンが十分に働かない状態には「インスリン分泌障害」が優位な場合と、「インスリン抵抗性」が優位な場合とその中間の場合があります。「インスリン分泌障害」とは、インスリンを合成・分泌する膵臓の機能が低下し、十分なインスリンを作れない状態をいいます。「インスリン抵抗性」とは、血中のインスリン濃度に見合ったインスリン作用が得られない状態をいい、膵臓では十分な量のインスリンが作られ分泌されているにもかかわらず、肝臓や筋肉などでインスリンの効き具合が悪くなり、血糖値が下がりにくくなります。肥満(特に内臓脂肪型)や高血圧、高中性脂肪(トリグリセライド)血症、低HDLコレステロール血症などはインスリン抵抗性を合併しやすいと考えられています。
インスリンの合成と分泌を行う膵臓β細胞の機能に関係する遺伝子や、インスリンの作用の伝達に関係する遺伝子などに異常を認めることが原因で起こる糖尿病をいいます。MODY(家族性若年性糖尿病)もこの分類に含まれ、これまでに6種類の原因遺伝子が同定されています(MODY1-6)。25歳未満で発症し、濃厚な糖尿病の家族歴を有することが特徴です。
膵臓の疾患や、内分泌疾患の他に、肝臓疾患や感染症、薬剤なども二次的に糖尿病を引き起こすことが知られています。
妊娠に関係した糖尿病には、①妊娠糖尿病、②妊娠中の明らかな糖尿病、③糖尿病合併妊娠の3パターンがあります。①妊娠糖尿病は、糖尿病という名称ではありますが、定義としては「妊娠中に初めて発見または発症した糖尿病に至っていない糖代謝異常」とあり、妊娠前には見逃されていた糖尿病(②妊娠中の明らかな糖尿病)や、すでに糖尿病と診断されている人が妊娠した場合(③糖尿病合併妊娠)を含みません。糖尿病には至らない軽度の糖代謝異常でも、お腹の赤ちゃんの発育に悪影響を及ぼしやすいことや、出産後に母体が糖尿病を発症するリスクが高いことなどが知られているため、適切な治療と出産後の十分な経過観察が必要です。
このような症状やお悩みがある方はご相談ください。
糖尿病の症状は人によって様々です。初期は自覚症状が乏しく、早期発見が難しい病気です。
気になる症状がある方や、健康診断などで高血糖や尿糖を指摘された方は早めの受診をお勧めします。
糖尿病はインスリンの作用不足により血糖値が慢性的に高い状態が持続する病気です。糖尿病と診断するためには、①血糖値が高いこと(高血糖)の診断と、②慢性的に高いことの診断が必要です。
血糖値は食事の前後や時間帯などによって大きく変動します。そこで安定した血糖値の状態を表す指標として、現在、広く使われているのがHbA1c(ヘモグロビン・エー・ワン・シー)です。過去約1〜2か月の平均血糖値を反映し、採血当日の食事や運動による影響を受けません。HbA1cが高くなると糖尿病の合併症の頻度も高くなることから、合併症予防のための血糖コントロールの管理に有効とされています。
(1)早朝空腹時の血糖値が126 mg/dL以上
(2)75g経口ブドウ糖負荷試験(OGTT)で2時間後の血糖値が200 mg/dL以上
(3)時間に関係なく測定した血糖値(随時血糖値)が200 mg/dL以上
(4)HbA1cの値が6.5%以上
・(1)〜(3)のうちの1つと(4)が同時に確認された場合、
・(1)〜(3)のうちの1つが確認され、別の日の検査でも(1)〜(3)のうちの1つ、あるいは(4)が確認された場合、
・(4)が確認され、別の日の検査で(1)〜(3)のうちの1つが確認された場合、
糖尿病と診断されます。
75g経口ブドウ糖負荷試験(OGTT)とは、糖尿病が疑われる方に対して、糖尿病と診断するための検査です。
以下のような方にはOGTTを積極的にお勧めしています。
他に肥満や高血圧、脂質異常症などを合併していて動脈硬化のリスクが高い方では
家系内血縁者に糖尿病の方が複数名いる方や肥満の方もOGTTを受けられることをお勧めします。