糖尿病の合併症|たにがわクリニック|栗東市の内科

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糖尿病の合併症

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糖尿病の合併症

糖尿病の合併症

糖尿病の合併症には、高度のインスリン不足によって起こる急性合併症と、高血糖が持続することによって起こる慢性合併症があります。以下では糖尿病の慢性合併症についてご説明します。
血管は血液を全身に循環させる重要な働きを持っていますが、糖尿病により高血糖状態が続くと血管が障害を受けます。糖尿病では細い血管(細小血管)が影響を受けやすく、血管が細ければ細いほど障害を受けやすいため、特に細い血管が集中している神経、目(網膜)、腎臓に障害が現れやすくなります。これが三大合併症(細小血管障害)といわれる「糖尿病性神経障害」、「糖尿病網膜症」、「糖尿病性腎症」です。
また、糖尿病では慢性的な高血糖状態に加えて、肥満(内臓脂肪型肥満)や脂質異常症(高中性脂肪血症や低HDLコレステロール血症)、高血圧といったメタボリックシンドロームを併せ持つことも多く、動脈硬化を起こしやすくなります。こういった糖尿病に合併した動脈硬化性疾患は太い血管(大血管)に影響を与えることから、大血管障害と呼ばれ、脳梗塞や心筋梗塞など、命にかかわる重大な病気を引き起こすこともあります。
これらの合併症は糖尿病の血糖コントロールが悪いほど、また糖尿病発症後の期間が長いほど起こりやすくなります。軽症のうちは良好な血糖コントロールにより改善が見込めますが、合併症がある程度進行してしまうと血糖コントロールだけでは改善を期待しにくくなります。合併症を起こさせない、進行させないためにも糖尿病の早期発見と早期からの適切な治療の継続が大切です。

糖尿病性神経障害

糖尿病三大合併症のうち、最も早期に出現する合併症です。血糖コントロールの状況にもよりますが、糖尿病になってから約5年で神経障害を発症するとされています。慢性的な高血糖により神経細胞や神経に血液を送っている細小血管に障害が起こることにより、全身のいろいろな神経に障害が起こります。症状としては、両足先、両足の裏のしびれから始まることが多く、進行するにつれて痛みや感覚低下、感覚の異常などをきたします。典型的な感覚の異常では、「足の裏に薄皮がかぶさっているような感じ」といった訴えをしばしば耳にします。感覚低下により足にケガややけどをしても痛みを感じず、気づかないことも少なくありません。
糖尿病による神経障害は自律神経にも影響を及ぼします。自律神経障害により立ちくらみ(起立性低血圧)、消化器症状(下痢や便秘)、勃起障害(ED)など様々な症状が起こることがあります。
神経障害が疑われる方には感覚神経や運動神経、自律神経の検査を行います。

糖尿病網膜症

神経障害の次に発症する糖尿病の三大合併症が糖尿病網膜症で、およそ7年で発症するとされています。初期は自覚症状がないため、網膜症を発症していても眼科を受診しなければ発見されません。煙のススや蚊のようなものが見えたり、視野に黒いカーテンがかかっているように見えたりというような自覚症状が出現する頃には、網膜症が進行していることも少なくありません。高血糖により網膜の毛細血管が傷つき視力低下や出血を起こし、最終的に失明に至ることもあります。
糖尿病網膜症は①網膜症なし、②単純網膜症、③増殖前網膜症、④増殖網膜症の4つの病期に分類されます。①と②は血糖コントロールによって網膜症の発症・進行を防ぎ、遅らせ、治すことも可能ですが、③や④まで進行してしまうと内科的な治療だけでは治すことは難しく、眼科での手術などの治療が必要となります。糖尿病網膜症は日本人の失明原因の第2位です。糖尿病と診断されたら、自覚症状がなくても定期的に「眼底検査」を受け、良好な血糖コントロールを継続的に行っていくことが大切です。病期にもよりますが、最低でも年に1回は眼科を受診するようにしましょう。

糖尿病性腎症

腎臓には糸球体という毛細血管のかたまりがあり、血液をろ過して尿を作っています。高血糖の状態が続くと、この糸球体の機能や構造に障害が起こり、初期には微量アルブミン尿が出現します。アルブミンはタンパク質の1種で、糖尿病性腎症の初期には通常の尿検査ではタンパク尿として検出されない微量なレベルのアルブミンが尿中に出現することから、微量アルブミン尿と呼ばれています。
アルブミン尿は
正常アルブミン尿:30mg/gCre未満
微量アルブミン尿:30~299mg/gCre
顕性アルブミン尿:300mg/gCre以上
と定義されています。この微量アルブミン尿が出ている段階が早期腎症です。
さらに腎症が進行し、糸球体の障害が進むと、通常の尿検査でも検出できるレベルまでタンパク尿が増加します(顕性アルブミン尿あるいは持続性タンパク尿)。この段階を顕性腎症期と呼び、むくみ(浮腫)を伴うこともあります。さらに進行すると、腎機能の低下を認め腎不全となり(腎不全期)、透析療法が必要となります(透析療法期)。日本における透析療法が必要となる原因の第1位は、糖尿病性腎症で全体の約40%を占めています。

糖尿病性腎症病期分類

病期 尿アルブミン値 mg/gCreあるいは尿タンパク値 g/gCre GFR(eGFR)
 mL/分/1.73㎡ 
第1期(腎症前期) 正常アルブミン尿(30未満) 30以上
第2期(早期腎症期) 微量アルブミン尿(30~299) 30以上
第3期(顕性腎症期) 顕性アルブミン尿(300以上)あるいは持続性タンパク尿(0.5以上) 30以上
第4期(腎不全期) 問わない 30未満
第5期(透析療法期) 透析療法中

糖尿病性腎症は、典型的には上記の病期に従ってまず微量アルブミン尿が出現し、その後タンパク尿が出現し、最終的に腎機能が低下します。しかし近年、顕性アルブミン尿(タンパク尿)は出現していないにもかかわらず、腎機能が著しく低下している非典型例も見受けられます。従来の典型的な糖尿病性腎症に、こういった非典型的な症例も含めて、腎機能の低下に糖尿病が関与している慢性腎臓病(CKD)のことを「糖尿病性腎臓病」と呼んでいます。
糖尿病性腎症の治療の基本は、食事療法、運動療法、薬物療法を中心とした血糖コントロールと血圧のコントロールです。さらに腎症の病期に合わせて蛋白質やカリウム、食塩などの制限も必要となります。
腎不全、透析療法が必要となる状態にならないためにも、腎症の早期発見、早期治療が大切で、そのためには定期的な尿検査、腎機能検査が重要です。
また、すでに腎機能が悪い方や、将来的に透析が必要になると言われている方も、少しでも進行を遅らせ、透析にならないためにぜひ早めに受診してください。

大血管障害

糖尿病では慢性的な高血糖状態に加えて、肥満(内臓脂肪型肥満)や脂質異常症(高中性脂肪血症や低HDLコレステロール血症)、高血圧といったメタボリックシンドロームを併せ持つことも多く、動脈硬化を起こしやすくなります。(→メタボリックシンドロームの詳細は肥満・メタボリックシンドロームへ)喫煙などの生活習慣が加わると、さらに動脈硬化のリスクが高まります。
主な動脈硬化性疾患としては、狭心症や心筋梗塞などの虚血性心疾患、脳梗塞、閉塞性動脈硬化症などが挙げられます。

糖尿病性足病変

糖尿病を発症してから長期間になると、慢性的な高血糖状態による神経障害、血流障害、易感染性(感染しやすいこと)などにより、足に靴ずれや傷、胼胝(たこ)などができやすくなります。神経障害による感覚低下があると痛みを感じにくく、感染していても気が付かないことがあり、さらに血流障害により治りも悪くなるため、最初は小さかった足の傷がいつの間にか潰瘍へと進行し、最終的に壊疽に至ります。
軽症であれば血流を改善させる薬物や抗菌薬により治る可能性が高いですが、重症になれば血流障害を改善させるための手術や、場合によっては足の切断が必要となることもあります。
足病変を起こさせないためには、日頃から足を清潔に保ち、こまめに足の観察を行い、やけどや深爪などに気をつけるといったフットケアが重要です。

歯周病

歯周病とは、細菌の感染により起こる歯茎の炎症のことで、進行すると歯がぐらついて、最終的には歯がぬける原因になります。糖尿病の患者様では歯周病を合併している方が多く、血糖コントロールが悪いと歯周病も重症化すると言われています。さらに歯周病がひどい方ほど血糖コントロールも悪くなることが多いため、歯周病の管理も大切です。
最近歯科を受診していないという方は、ぜひ早めに一度歯科を受診し、歯周病のチェックを受けてください。